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ドリップバッグの製造話

少し前まで、ドリップバッグには"手軽だけどそれなりの味"と言うイメージがあったように思います。コーヒー屋さんにとっても、風味や製造コストの面から、特に個人のお店が積極的に取り組める商品ではなかった印象です。

しかしながら、コーヒーのギフト需要の高まりや、製造技術の向上、少ロット生産化などにより、市場が大きくなっていくにつれ、お客さん側の意識も、”手軽だから買う”のではなく”美味しいから買う”へと変わってきたように感じています。

ドリップバッグの作り方は、大きく分けるて2通りあります。
ひとつは、お店で1個ずつ手作業で作る方法です。
1種類につき1個から作れるので、いろいろな種類を必要な数だけ作れます。脱酸素剤エージレスと呼ばれるコーヒー用の乾燥剤を使い、二酸化炭素を吸収し、なるべく密封にできる状態を作り、風味の維持に取り組みます。しかし、手作業での限界、使用する器具のムラ、整った環境以外では、様々な要因で風味を維持することが難しい印象です。
もうひとつは、焙煎したコーヒー豆を専門の工場に送り、充填し、製造してもらう方法です。1回の製造である程度まとまった数が出来上がります。在庫管理やロスの可能性などのリスクがありますが、窒素ガスを封入し、酸素を追い出すことで、風味を長期間保持することができます。

ちょっと専門的な話なのですが、一般的には工場で充填する窒素置換よりも、脱酸素剤の方が袋の中の酸素濃度を低いまま保存できるため、保存期間も長くとれるとされています。しかし、窒素置換と脱酸素剤のドリップバッグを一定期間保存したのち開封すると、窒素置換したものの方が香りに優れている、と感じる人が多いと言う研究結果があります。コーヒーに関しては、脱酸素剤がコーヒーの香りまで吸ってしまう可能性を否定しきれません。でも、コーヒーからは二酸化炭素が発生するため、脱酸素剤を入れない袋はパンパンに膨らんでしまい、破裂する可能性も出てきてしまいます。そのため、お店で作るドリップバッグは、挽いた粉を1日置いて、ある程度ガスを抜いてから詰めたり、シールミスが起きないように大きなシーラーを導入したり、オペレーションをスムーズにするための工夫を多くされていると思います。嗜好品飲料の中でも、紅茶や緑茶が簡易的な包装で販売されているのに対して、コーヒーはドリップバッグひとつ作るのにも、いろいろと解決しないといけない問題があります。

僕がお店をはじめた2012年あたりは、生豆商社さんや生豆問屋さんが小分け販売を始めたり、審査はありますが、会員登録だけで購入できるオンラインサイトができたり、コーヒー業界全体が小規模に対応していく時期でもありました。この小規模化は、コーヒー業界を大きく変える流れになり、コーヒー屋さんの品揃えは少量多品種が当たり前になります。お店を始めるハードルも下がり、副業で焙煎を始められる方もとても多く増えました。
ドリップバッグの製造も、最小ロット1000個という、それでも多いと思ってしまったのですが、当時としてはとても少ない製造ロットで受けてくださり、費用や在庫面でも、なんとかなるかな、と言う数字を出してもらえたので、お店では初めから工場生産を行なっています。はじめは自分で作っていたのですが、風味の維持、と言うよりも、ドリップバッグをうまく作れないほど僕がぶきっちょだったので、そのことが工場生産へ踏み切るキッカケになりました。

最初は白の無地にシールを貼って、2種類で2000個作ったのですが、少しずつ買ってくれる人が増えてくると気を良くして、もっといいパッケージで作りたいと思うようになってきました。
これも、当時の印刷技術としては始まったばかりだったそうなのですが、白のパックにフルカラー印刷ができることを知り、製造費は、ほぼ2倍になりましたが作ることにしました。欲が出てしまい、並べた時に3色あった方がいいなと思い3000個作りました。初回の2000個もまだ残っていたので,お店にはおけず、自分の家に4~5000個のドリップバッグを置くことになり、売っても売っても一向に減った気がしなくて、最後は敷布団にすることを覚悟して、たくさんのお客さんに救っていただき、全て販売することができました。

パッケージも重要ですが、やはりコーヒーは飲んでナンボのものですから、はじめて作るときは味作りにずいぶん試行錯誤しました。
ドリップバッグの難しい点は、10gを動かせない、と言う点にあると思います。普通のドリップなら粉を増やしたり減らしたりして調整してもらえますが、1回飲むのに2袋開けてくださいと言うのもおかしいので、ドリップバッグには専用のブレンドや焙煎が必要なんじゃないかと考えました。
と言うのも、当時の自分のお店では、深煎りのネルドリップを提供していました。粉はすごく粗く挽いて、たっぷり使って小さいカップで、と言うことをメインでやっていたので、違うものと分かりつつ、それを意識してしまっていたところもあると思います。
そういった苦悩、と言うか迷走と言うか、ジタバタが製造のたびにあり、ブレンドの構成、粉の挽き目、サンプルと製造品とのズレなどを確信して、繰り返すうちに、少しずつコツを掴めてきたように思います。
実は、今販売しているように中身を定番化できたのは、ここ1〜2年のことで、それまでは作るたびに中身も見た目も変わっていました。
これからも、こっちの方がいいなと思えば変えることはあるのですが、大まかな方向性としては、これで行こうと思うものが出来上がったと思います。
手軽で美味しく、外泊の時やお土産にもおすすめのコーヒーです。

定番として作っている3つのドリップバッグのご紹介です。
こちらのライトグリーンはオリジナル・ブレンドと言う名前です。
焙煎は中深煎り(深め)で酸味はありません。
コーヒー豆で販売しているブレンド”コグマ・ブラック”と言うものがあり、それとほとんど同じなのですが、ドリップバッグは、はじめての方にも多く手にしていただけるコーヒーなので、コグマブラックと書いてもお店の名前なのかなんなのかわからないなと言うことでオリジナルブレンドと言う名前になりました。
この色はお店のカラーにも似ているのですが、工場が持っている袋のひとつにあって、これはうちが使わなでどうするんだと勢いで作ったものです。
何社かの工場で作ってもらったことがありますが、しっかりした材質で、中身も取り扱いしやすく気に入ってます。
豆のベースはタンザニアかケニア、そこにブラジルをブレンドしています。
深めの焙煎でコクがありつつ、後味の軽さを意識しました。高級ケーキにもいいですが、コンビニのお菓子にも合わせたいデイリーなコーヒーがイメージです。

薄いグレー、ほぼ白なのですが、こちらはもう少ししっかりした風味の深煎りになります。僕の大好きなコーヒーの先輩方が作ってきた、深煎りの甘苦い味を目指して考えたブレンドです。名前はトリビュートブレンドと言います。マンデリンとハラールモカを主軸にイエメンとコロンビアをブレンドしました。構成は今後変わっていくのですが、目指すのは深煎りの甘苦さです。小さなカップで作っていただくと、持ち味を感じやすいかと思います。

最後はデカフェです。焙煎は中深煎りで酸味はありません。ブラジルベースのデカフェブレンドです。現在はデカフェのみティーバッグ式になっています。ティーバッグ式のことをディップスタイルコーヒーと言うそうなので、そのように印刷したのですが、スペル間違ってると思われたらどうしようと心配になるので、説明が長くなるコーヒーです。作り方はお湯に浸しておくだけなので楽ちんです。浸漬法と言う抽出方法になるため、ドリップタイプよりも柔らかく、あっさりした印象になると思います。
これの画期的なところは、お湯以外でもちゃんとできるところです。温めた牛乳に直接入れてもらえば、薄くならないカフェオレが作れます。このスタイルの弱点は後半に溜まりやすい微粉だと思うのですが、それも気にならないのでとてもおすすめです。ディカフェオレと言う言葉を流行らせようと思って一時使っていたのですが気にも止められなかったと思います。

これ以外にも、限定で作ったり、お仕事いただいて、よそのお店や会社のドリップバッグを作らせてもらうこともあります。
そういったお仕事も承っておりますので、機会がありましたらご相談ください!